「でも、小柳とこそこそ話してたじゃないか。何を話してたんだよ?」


「え、そうだったかな。忘れちゃった。どうせ大した話じゃないわよ」


 と言いつつ、彼から名刺の裏を見ろと言われた事を私は思い出した。何て書いてあるんだろう。見たくないなぁ。


「ほんとかなぁ。だとしても、あいつには気をつけた方がいいよ」


「それって、どういう事?」


「あいつさ、まだ姉貴の事、諦めてないみたいなんだ」


「へえー、そうなんだ?」


「あれ? まんざらでもないって顔だな?」


 和也は足を止め、屈んで私の顔を覗き込んでそう言った。


「ば、バカ言わないでよ。そんな顔してないでしょ?」


「どうかなぁ。今の姉貴はフリーだし、小柳と付き合ったりして?」


「そんなわけないでしょ!」


 私はキッパリと言い切った。小柳君となんて考えられないし、もう、他の男なんて……