休日だけあって、水族館は大勢の人でごった返していた。家族連れが多い中、私達のような“恋人”同士と思われるカップルも少なくない。


 『水族館なんてガキっぽい』と言っていた和也だけど、中に入ってからは結構機嫌がよく、水槽の向こうを興味深げに眺めていた。


 私も久しぶりの水族館で、イルカやラッコが可愛らしくて楽しかったけど、それにも増して和也と一緒にいられる事が楽しかった。しかも今日は、どんなにベタベタしてもオッケー。全ては“恋人ごっこ”だからで済まされる。


 和也もその状況にだいぶ慣れたみたいで、私がどんなにベタベタしても嫌がらなくなった。時には周りの人から怪訝そうに見られる事もあるけど、そんなのは一切気にしない。私は最初で最後かもしれない今日という日のチャンスを、最大限有効に使うつもりだから。


 その後レストランで食事をし、帰路に着いたものの、行きと違って帰りの高速道路は大渋滞だった。


「ねえ、どこかで休んで行こうよ?」


 私は、運転で疲れていそうな和也に向かってそう言った。