「ったく。どこ行きゃいいんだよ……」


「ねえ、水族館なんか、どう?」


 私は目をパチパチしながら和也に聞いた。


「水族館? ガキじゃあるまいし……」


「えー、イルカちゃんとかラッコちゃん、観たいなぁ」


 口を尖らせ、甘えるような声で言ってみた。我ながら、これはちょっとやり過ぎかも。


「イルカちゃんって……。わ、わかった、じゃあ水族館ね」


 和也は一瞬ギョッとした顔をし、カーナビの操作を始めた。


「だったら、最初からそう言えばいいのによ……。姉貴は素直じゃねえよなぁ」


 と、ぶつぶつ文句を言いながら。

 確かにそう。私は最初から水族館に行くって決めていた。それともうひとつ、決めてる事があるのよね……