「特に小柳は姉貴に夢中だったもんな……。覚えてる? 俺と同級生だった小柳って奴」


「え? あ……ちょっとね」


「あいつ、しつこかったもんな?」


「そう、だったかな。もう忘れちゃった」


 というのは嘘。

 小柳君の事は、よく覚えてる。大人っぽくて、ルックスはまあまあの子だった。

 私にしつこく言い寄る子はたくさんいたけど、小柳君は特別。私にとっては唯一の存在。


 と言っても深い関係だったわけじゃない。他の子にしたように、私は小柳君も適当にあしらったつもりだった。

 ところが、彼は和也の同級生という立場を利用し、他の子より私に近付くチャンスが多かった。“私と”と言うより、“私と和也に”と言うべきか。


 その結果、彼に気付かれてしまった。親でさえ気付いていない、私の禁断の想いを。