「俺は中学の時。本当はもっと偏差値の高い高校に行けたのに、姉貴と同じ高校に通いたくてわざわざランクを下げたんだ。気付かなかった?」


「チッ」


 それは気付いていた。悔しいけど、和也は私より勉強が出来るのに、なんで同じ高校を受けたのか不思議だった。


「姉貴のその“チッ”っていうの、あまりいいクセとは言えないぜ?」


「あんたに言われたくない」


「はあ? なんで?」


「だって、あんたのクセが伝ったんだからね?」


「チッ。嘘だろ?」


「ほらね?」


「あ、ほんとだ……」


 和也は本気で驚いていた。クセって、案外自分では気付いてないものなのね……


「私、和也が“チッ”って言う時の顔、結構好きかも」


「ほんとに? 実は、俺もなんだ。姉貴がチッって言って唇を尖らすと、思わず、その……キスしたくなる」


「そ、そうなの?」


「ああ」と言い、和也ははにかむような顔をした。

 うふ。可愛い……


「じゃあ……、チッ」


 私は和也にキスしてほしくて、わざとチッと舌打ちをしてみた。