私は、和也の背中を見つめたまま、動けなかった。立ち上がって和也に触れたいのだけど、まるで腰が抜けたみたいに、力が入らない。まさか、こんなにはっきり和也の気持ちが聞けるなんて、思ってなかったから。


 『たぶん和也も、志乃さんと想いは同じですよ』


 小柳君の言葉を思い出す。そうだといいなと思ったし、そうかもしれないと思っていたけど、実際に本人の口からそれを聞くと、驚きやら感動やらが一遍に湧き上がり、私は軽いパニックに陥ったみたいだ。


「俺……この家を出て行く事にした」


「えっ?」


「このあいだ姉貴にキスした時、思ったんだ。もう限界だって。このまま姉貴の側にいたら、俺はもっと姉貴を……求めてしまう」