「雛月さんね。確かヒナって呼ばれてたよね。あれって名前?」

「ちょっと違う。あだ名みたいなもんだよ」


夕凪は納得したようでそれ以上聞いてこなかった。

「一応、これで一通り案内し終わったけど、何か聞いときたいことあるか?」


夕凪は静かに空を見上げた。
穏やかで、ほんの少し寂しそうな横顔。


「この学校ってさ、屋上開いてる?」


「屋上?開いてるけど、それがどうかしたか?」


屋上は立ち入り禁止なんてとこが多いけど、うちの学校は開けっ放しだ。
その割りに屋上に行く奴は少ないからサボるのには丁度いい。

「何でもない」


なんとなく理由は聞いちゃいけない気がした。
目に見えない壁に遮られているようで。