「美しい音って書いて“ミオ”。それがヒナの本当の名前なんだ」



俺たちは風沢に連れられて屋上に来ていた。

ひとがめったに来ないこの場所なら、他の誰かに話を聞かれる心配はない。



「あいつの母親はピアニスト、父親はバイオリニストで昔から家に居ないことが多かったんだ。美音のこと放ったらかしで、あいつはいつも寂しそうにしてた」



あぁ、それで風沢が保護者みたいに気にかけてたのか。


「それが雛月がフルネーム名乗らないのとどう関係あるの?」