「風沢」


名字で呼ばれるようになったのも3年前から。


幼なじみとしてずっと側に居たヒナとの距離が遠くなった気がして、呼ばれる度に胸が痛んだ。



「いろいろ迷惑かけてごめん。あと・・・ありがとう」


「ごめんは余計だっての」



ヒナが家に入るのを見届けてから俺も自分の家へと足を向ける。




「いつかまた、俺のこと“奏多”って呼んでくれる日が来るよな・・・?」



そしたら俺は堂々とヒナの本当の名前を呼ぶことができる。


ずっと待ってるから。


どれだけ時間がかかったとしても、絶対に。