「なんでもないよ」
そういってごまかした。
「この時が一瞬がすごくすごくたいせつなの。
振り返るといつもきらきらしてる。
私の背中を押してくれる大切な宝物…」
「深戸は立派だよ」
詩真がはっきり言った。
「…え?」
それからきらきらした笑顔で言った。
「自分のことを弱いって認められる人なんてそういない。
ましてや、自分のその弱さを知った上で向き合って
強くなろうと心に決める人はもっと少ない。
自分が弱いと認められない人がいる中で、
向き合ってる深戸は充分強い」
泣きたくなった。
でも泣きたくなかった。
だって、やっと泣き止んだんだもん。
「深戸は立派だよ」
…言い直すし。
かっこよすぎ。
「ありがとう、詩真」
「…どういたしまして」