言われた方向に目をやると、確かに結衣が見えた。
実は、ここの向かいは結衣の家だから、見かけてもおかしくはないんだけど…
どうも、一人ではないらしい。
店の前で、誰かと話している。
ここからじゃ相手はよく見えないけど、男の人だ。
五十嵐君…じゃないよね。
顔とかは見えないけど、服装とか雰囲気から、年上の人だって事はわかる。
そうこうしている間に、男の人が近くに停めてあった車に乗り込んだ。
「あっ…」
…行っちゃった。
走り去った車が見えなくなっても、結衣はそのままじっと動かない。
「…良かった。」
「あ?」
「何でもなーい。」
良かった。
結衣…恋、してたんだね。