柊に興味を無くした俺は、再びストレッチを始めた。


亮もそれに続く。


「あのさ、」


「あ?」


「坂本さんに好きなヤツいるか聞いてくれって、航平に頼んだだろ?」


急にその話をするのは、やめてほしい。


とは言えないので、冷静なフリをして相槌をうつ。


「あぁ。」


「俺さ、それで、彼女に好きなヤツいるんなら、諦めようと思ってたんだ。

まぁ、それでなくても、フラれてるんだけどな。」


あははっと、苦笑いする亮が痛々しかった。


今日の昼休みに、亮に頼まれていた事を坂本に聞いた。


好きな人がいるのか、どうか…


『いるわよ。』


そして、その答えは容赦無く、あっさりと返ってきた。


俺はなるべくダメージが少ないよう、部活が始まる前に亮にそっと伝えたんだ。


サッカーをしている間は、余計な事を考えなくても済むって事は、身をもって知ってたから。


『そっか!』


その時はそう笑っただけだったけど、そんな事を考えていたなんて知らなかった。


俺の動揺をよそに、亮が言葉を続ける。


「…けど、ダメだった。」


その少し切なそうな笑顔が、オレンジ色の夕日に照らされ、皮肉にもコイツの端正な顔が、更に魅力的に映えた。


「全然、諦めつかねーんだよ。
まいったわ。」


ハハハ、と笑う亮。


本当にな。


わかるよ、それ。



簡単に諦められたら、どんなに楽なんだろうな。