「よーっし、上がっていいぞ!」
顧問の立花の声が、グラウンドに響く。
「「お疲れさまでしたっ!」」
今日の練習が終わり、各自部室に戻って行く。
「はぁっ…、はぁっ…」
俺は整わない息をしつつ、身体を解す為に、ストレッチを始めた。
あれこれ考えていた頭がスッキリして、気持ちが良い。
前屈をしている時、フェンスの向こうに知った顔を見つけた。
「あれ…」
「ん?」
同じくストレッチをしていた亮が反応する。
「…あれ、誰だっけ?」
昼間、美里と保健室の前で見かけた女。
そいつが、グラウンドの外でこっちを見ている。
「え?」
亮が顔を上げ、俺の目線を追った。
「あぁ、柊さんか。」
「知ってんのか?」
すると、亮が異常な反応を見せた。
「はぁっ?!
男なら、誰でも知ってるだろーがっ!
2年E組21番柊なぎさ。
俺のクラスにも、柊さん好きな奴多いぜ。」
「ふーん…。」
得意気に自分の情報を披露する亮には悪いが、俺にとってはどうでも良い事だった。