頭の中で葛藤しているうちに、結局聞き出す事が出来ないまま、その日は終わった。


グダグダ悩んで、何も行動しない自分に嫌気がさす。


「こーうへいっ!」


突然、背中に衝撃が走る。


「いっ!…てーなぁ!」



振り向き、俺の背中を思いっきり叩いてきた犯人を、軽く睨む。


「ははっ!悪いな!
部活行こうぜーっ!」


五十嵐亮がテンション高めに、声を上げた。


最近のコイツの、部活に対する張り切りようは、少し異常だ。


センスは抜群だけど、走り込み等の基礎練習が苦手な亮は、いつもスタミナ不足を理由に、スタメンから外されていた。


それが最近じゃ、顧問が目を丸くするくらい、ストイックに練習に取り組んでいる。


他のメンバーも、俺と同じメニューをこなす亮を見て、何があったのかと噂している。


その理由を、俺だけは知っている。


“女にフラれたから”


…実にシンプルな理由だ。