「大丈夫ですか?あの、これよかったら使ってください」



俺は自分が差していたビニール傘を春奈の頭の上から差した。



「・・・」


春奈は何も言わないまま、ゆっくりと顔をあげた。


『泣いてる?』



春奈が顔を上げると、ものすごく悲しそうな顔をしていた。



俺は、その時春奈が泣いているような気がした。




雨で髪も、服も、靴も体全体が濡れていて確信はなかったけれど、そんな気がしたのだ。