…今思えばあの時から恋に落ちていたのかもしれない。
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放課後、あたしは先生に頼まれた教材を研究室に運んでいた。
「……重い。」
その教材を持つと自分の上半身が隠れる。
そんな状態であたしは階段を上っていた。
上の階からはパタパタと走る音が聞こえる。
誰も下ってきませんように!
あたしはそう願っていた。
するとそんな願いは叶わず誰かが勢いよく階段を下ってきた。
― ドンッ
あたしとその人は衝突し、教材は辺りに飛び散った。
「わっ!」
あたしは短く叫んで、尻餅をついた。
運よく数段しか上ってなかったため尻餅ですんだのだ。
「ごめん」
そう言い残してその人は階段を下っていった。
あたしは座って散らばった教材を集めはじめていた。
腰をさすりながらため息をつくと
「悪かった…」
気づけばさっき下っていった彼が戻ってきていて一緒に拾ってくれている。
「あっ!大丈夫…自分の不注意だから」
そういって立ち上がると彼は自分の集めたのをあたしのに重ね「ん…」と小さくいって階段を駆け上がっていった。
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あたしは今も彼にこの日の彼を探してる…。