花音は叩かれた左頬を押さえながら、驚いたように学園長を見た。


「……いつもそうよ。
アンタはいつでも私の大切なものを奪っていく!!
あの人も沙織も……隆史も」


あの人……それはきっと花音のお父さんで、沙織さんは学園長の妹だろう。


「……やっぱりさっさと捨てておくんだったわ。
金づるになるかもしれないと思って今まで育ててあげたけど、それも無駄だったみたいね」

「小百合!」

「隆史、あなたもこんな疫病神と一緒にいたら何か不幸が起こるわよ。
きっと、今に……」

「いい加減にしないか!!」


タカさんの怒鳴り声にさすがの学園長も口を閉じた。

俺と花音も驚いてタカさんを見た。


「いつまでこんなことを続けるつもりなんだ……。
もう十分だろ……」

「何で……どうしてこの子達を庇うのよ!!」

「……決まってるだろ」


タカさんが両脇にいた俺達の肩を抱いて自分の方に引き寄せた。

そして……


「俺は大翔と花音ちゃんを愛してるからだ」


……タカさんは躊躇いもせずにそう言った。

まっすぐ……学園長の方を見て。