静かな執務室の中、カリカリと書類を書くペンの音が響いている。
アランは国王に出す報告書を朝からずっと書いていた。
エミリーがこの国から姿を消した際、全く仕事が手につかずにいたアランは、山のように書類を溜めてしまっていた。
パトリックに頼んで処理をして貰ってはいたが、到底追いつかず、今こうして頑張って処理をしている。
時々ペンを止めては考え込み、暫く時を置いて、再びペンが動き出す。
こうしていても、朝見たエミリーの表情が頭から離れない。
潤んでいたアメジストの瞳。
言いたいことを飲み込み、懸命に笑顔を作っていた。
あの表情は結婚前によく見たものだ。
途端に、再び遠くに行ってしまいそうな不安に陥る。
―――全く・・・こんなに惑わされるとは・・・。
早く済ませねばならぬのに、気になって仕事が手につかぬ・・・。
アランはため息を吐いてペンを置き、腕を組んで上を見上げて瞳を閉じた。
コンコン!
『アラン様、フランクが定期診療に参りました』
「―――入れ」
「王子様、失礼致します」
「フランク、診療は午後のはずだが、予定が早まったのか?」
「はい。王子様・・・腕を出して下さい」
足元に鞄を置いて脇に立ったフランクに、アランは腕を差し出した。
フランクはいつも通り脈を計り始めた。
フランクに腕を預け、アランは何気なく窓の外を見やった。
すると、ブロンドの髪をふわふわと揺らして歩く愛しい姿が目に入った。
その隣には、背の高い銀髪の男が、華奢な身体に寄り添うようにして歩いている。
その後ろを、少し距離を置いて護衛のシリウスが歩いていた。
三人は、どうやら貴賓館の庭に向かっているようで、王の塔の方に向かって歩いている。
―――あちらの庭に参るのか。
そういえば、以前、あちらの庭が気に入ったと申しておったな。
パトリックと一緒か―――危険はないだろうが、気になるな。
「王子様、少し脈が速いですな。お疲れ気味では御座いませんか?」
「いや、大事ない・・・」
アランは国王に出す報告書を朝からずっと書いていた。
エミリーがこの国から姿を消した際、全く仕事が手につかずにいたアランは、山のように書類を溜めてしまっていた。
パトリックに頼んで処理をして貰ってはいたが、到底追いつかず、今こうして頑張って処理をしている。
時々ペンを止めては考え込み、暫く時を置いて、再びペンが動き出す。
こうしていても、朝見たエミリーの表情が頭から離れない。
潤んでいたアメジストの瞳。
言いたいことを飲み込み、懸命に笑顔を作っていた。
あの表情は結婚前によく見たものだ。
途端に、再び遠くに行ってしまいそうな不安に陥る。
―――全く・・・こんなに惑わされるとは・・・。
早く済ませねばならぬのに、気になって仕事が手につかぬ・・・。
アランはため息を吐いてペンを置き、腕を組んで上を見上げて瞳を閉じた。
コンコン!
『アラン様、フランクが定期診療に参りました』
「―――入れ」
「王子様、失礼致します」
「フランク、診療は午後のはずだが、予定が早まったのか?」
「はい。王子様・・・腕を出して下さい」
足元に鞄を置いて脇に立ったフランクに、アランは腕を差し出した。
フランクはいつも通り脈を計り始めた。
フランクに腕を預け、アランは何気なく窓の外を見やった。
すると、ブロンドの髪をふわふわと揺らして歩く愛しい姿が目に入った。
その隣には、背の高い銀髪の男が、華奢な身体に寄り添うようにして歩いている。
その後ろを、少し距離を置いて護衛のシリウスが歩いていた。
三人は、どうやら貴賓館の庭に向かっているようで、王の塔の方に向かって歩いている。
―――あちらの庭に参るのか。
そういえば、以前、あちらの庭が気に入ったと申しておったな。
パトリックと一緒か―――危険はないだろうが、気になるな。
「王子様、少し脈が速いですな。お疲れ気味では御座いませんか?」
「いや、大事ない・・・」