行動を起こす前に知ることができて良かったと、心底安堵しつつ前を見れば頬をぷっくりと膨らませたシンディが映る。納得、しただろうか。
「え~、せっかく思いついたのに・・・いいと思ったのに。駄目なの?」
心底から残念そうな声を出すシンディに再度ダメだと告げてデザートを食べるように促し、冷めかけた珈琲を口にして気を落ち着かせる。
アランとは違い、国王は茶目っ気のあるお方だ。
面白いと思えば即実行されかねない。
何しろご夫婦揃って日頃から私のことを気に掛けて下さってるのだから。
“そなた、漸くその気になったのだな!うむ、任せよ”
とでも仰り、ラムスターの屋敷では狭いだろうからと、城の広間の使用許可まで出されるだろう。
威厳あるブルーの瞳を煌かせて茶目っ気たっぷりに笑う国王の顔と、その展開をあれこれ想像してしまい苦笑する。
実際に有り得そうで怖い。
・・・何気に、危ういところだったな・・・。
前に進まねばとは思うが、まだ身を固める気はない。
今のままでは彼女以外の女性を大切にする自信は、全くと言っていいほどに無いのだから。
・・・しかし、花嫁探し、か・・・。
父上がご存命であれば政略結婚の話も数多く舞い込み今頃は妻と生活してるのだろうが、当主である私に対しては何故かそういったものも無く平穏に日々は過ぎている。
あれば、国王から話が来るくらいだが・・・、そうなれば国を超えての縁談になるだろう。
今のところ気配は無いが、王族として、持ち掛けられれば逃げることは難しい。
相手がギディオンより強国であればなおさらに拒否できない。
国を守る。
王族としてならばそれもいいかもしれないが、やはり愛する者との生活を私は望みたい―――
「ふぅ・・・お腹いっぱいだわ。ご馳走さまでした。とても美味しかったわ・・・私これ、すごく気に入っちゃった。このお店のものをもっと食べてみたいわ」
『空のアトリエ』のケーキをすっかり平らげたシンディが、満足げに息を吐いて微笑む。
あの女性、サリーの作ったケーキはそれほどに美味しいのか。
「そうか、気に入ってくれて私も嬉しいよ。母上にもお土産に持っていくといい。手配しておこう」
「本当?ありがとうお兄様!お母様もきっと喜ぶわ!」
身体ごと勢いよく首に巻き付いてくるか細い腕を受け止め、さらさらの髪を優しく撫でる。
今は、シンディがいればそれでいいとも思う。この娘が嫁に行くまでは―――
「―――おやすみなさい。ね、明日はお約束通り、お願いよ?」
「あぁ、分かってるよ。おやすみ、シンディ」
シンディの唇が軽く頬に触れるので、こちらも頬にキスを返す。
銀の髪を揺らしながら食堂を出て行く背中を見送り、ため息を一つ零して席を立ち肩をすくめた。
―――全く、この私を焦らせるとは・・・。
そんなことが出来る女性は、この国中を探しても、シンディと彼女の、二人だけだな―――
「え~、せっかく思いついたのに・・・いいと思ったのに。駄目なの?」
心底から残念そうな声を出すシンディに再度ダメだと告げてデザートを食べるように促し、冷めかけた珈琲を口にして気を落ち着かせる。
アランとは違い、国王は茶目っ気のあるお方だ。
面白いと思えば即実行されかねない。
何しろご夫婦揃って日頃から私のことを気に掛けて下さってるのだから。
“そなた、漸くその気になったのだな!うむ、任せよ”
とでも仰り、ラムスターの屋敷では狭いだろうからと、城の広間の使用許可まで出されるだろう。
威厳あるブルーの瞳を煌かせて茶目っ気たっぷりに笑う国王の顔と、その展開をあれこれ想像してしまい苦笑する。
実際に有り得そうで怖い。
・・・何気に、危ういところだったな・・・。
前に進まねばとは思うが、まだ身を固める気はない。
今のままでは彼女以外の女性を大切にする自信は、全くと言っていいほどに無いのだから。
・・・しかし、花嫁探し、か・・・。
父上がご存命であれば政略結婚の話も数多く舞い込み今頃は妻と生活してるのだろうが、当主である私に対しては何故かそういったものも無く平穏に日々は過ぎている。
あれば、国王から話が来るくらいだが・・・、そうなれば国を超えての縁談になるだろう。
今のところ気配は無いが、王族として、持ち掛けられれば逃げることは難しい。
相手がギディオンより強国であればなおさらに拒否できない。
国を守る。
王族としてならばそれもいいかもしれないが、やはり愛する者との生活を私は望みたい―――
「ふぅ・・・お腹いっぱいだわ。ご馳走さまでした。とても美味しかったわ・・・私これ、すごく気に入っちゃった。このお店のものをもっと食べてみたいわ」
『空のアトリエ』のケーキをすっかり平らげたシンディが、満足げに息を吐いて微笑む。
あの女性、サリーの作ったケーキはそれほどに美味しいのか。
「そうか、気に入ってくれて私も嬉しいよ。母上にもお土産に持っていくといい。手配しておこう」
「本当?ありがとうお兄様!お母様もきっと喜ぶわ!」
身体ごと勢いよく首に巻き付いてくるか細い腕を受け止め、さらさらの髪を優しく撫でる。
今は、シンディがいればそれでいいとも思う。この娘が嫁に行くまでは―――
「―――おやすみなさい。ね、明日はお約束通り、お願いよ?」
「あぁ、分かってるよ。おやすみ、シンディ」
シンディの唇が軽く頬に触れるので、こちらも頬にキスを返す。
銀の髪を揺らしながら食堂を出て行く背中を見送り、ため息を一つ零して席を立ち肩をすくめた。
―――全く、この私を焦らせるとは・・・。
そんなことが出来る女性は、この国中を探しても、シンディと彼女の、二人だけだな―――