「招待客の幅を広げる、か。良い案だが一つ問題があるぞ?シンディ、パーティはいつなのか知ってるだろう?新たに招待状を出すには、日が無い」


「それは大丈夫!お触れを出すのよ。お兄様は王族なのよ?この国筆頭のラムスター家の当主なんだから。それに加えてお兄様のお相手選びなのよ?お触れを出すだけで、着飾った綺麗なご令嬢方がこの屋敷に入りきらないほど、それはもうた~くさん来られると思うの。そうすれば、出会いが広がるでしょ。来てくれた人皆とダンスをすれば、必ずきっとお兄様の目に叶う人が現れるわ」



身ぶり手ぶりを交えてキラキラと輝く瞳で語った後に、「そう、エミリーさんのような・・・」とぼそっと呟く声を軽く聞き流し曖昧に微笑みを返す。


―――お触れを出す―――


そう来たか。

まるで童話『灰かぶり姫』の王子のようなことを私に実行しろと言うのだな。

これは、困ったな・・シンディなりに私のことを思ってくれてるのがヒシヒシと伝わってくるだけに、どう断ればいいのだろうか。

確かに、私も王族の一員ではあるが――――・・・。



ね?私に任せて!と自信ありげに笑うシンディは、あれこれと手順を練り始めてるのか、細い人差し指を顎に当て瞳は宙を彷徨わせている。

その様子は、どうやら本当に今先程に思いついたようで・・・これはやはりはっきりと止めないと、大変なことになりそうだ。

女性だとはいえ、シンディも王族の一員だ。

その気になれば、人を動かすことができる力を十分に持っている。



「――――っと、シンディ?有り難いが。お触れは国王にしか出せないんだよ。それはどういうことか、分かるね?」


窘めるようにそう言えば、え・・そうなの?と残念そうに呟き、一瞬瞳を伏せた後すぐに両手をパン!と合わせ、花が咲いたような笑みをこちらに向けて弾んだ声を出した。


「だったら、出してもらうように頼めばいいのね?そうしたら、アラン様に頼んで国王様に申し出てもらえばいいわ。お兄様のことだもの、きっと協力してくれるはずよ!」



アラン?

ますますややこしいことになる予感がする・・不味いな。



「あぁ――待った。シンディ、言い方が不十分だったね。お触れは国の大事を国民に知らしめるためにするものだ。公のものであって、私事に使うものではないんだよ」



世継ぎ王子のお相手探しならばまだしも。

いや、童話の王子ではないが・・。

一国の王子のお相手探しに舞踏会を開くなど、あのようなことは、現実にはあり得ないことだろう。


・・っ、逆に考えれば、私程度の立場なら十分に有り得るということか?


じんわりと嫌な汗が滲んでくる。