窓辺にある水を張ったガラスの置物に反射した光がゆらゆらと揺れながら天井を照らし、何とも不思議な空間となっていた。

この雰囲気は、彼女の趣味なのだろうか。


「私は、この店が好きなんだ。来てくれた客が美味しいって言って笑ってくれる。私の作った物を食べて飲んで寛いでくれる。そんなのを見てるのが好きなのさ。だから―――強いて言えば、来てくれる客みんなが、彼氏かな?」


男も女も―――

そう言って彼女は、はにかむように笑いながら自らの髪を指で梳いた。

その姿が何とも綺麗に見え、知らずに言葉が出ていた。



「客として来れば、私も君の彼氏の一人になれるのかい?」

「―――へ?・・・ぁ・・あぁ、もう、何言ってんだい。純情な女をからかうんじゃないよ!・・・ぁ・・・あ、あの、そう―――コレ。コレ持って行きなよ。王子妃様に会わせてくれたし、守ってくれたし、本当にいろいろありがとう・・お礼さ」



ガサガサと取り出してきた包みを袋に入れたものを、ずいっと私の手元に差し出してきた。

綺麗に包まれたそれを見て思う。・・・これは、明日の売りものじゃないのか?


「あぁ、これは、貰えないよ。私は当たり前のことをしただけだ。それに、そんなつもりで君を送ったんじゃない」

「何言ってんだい。アンタもさっき言っただろ?人の好意は受け取るもんだよ。あの仏頂面のアラン王子だって、素直に受け取るんだ。アンタも遠慮することないよ」

「―――アランが?」

「あ・・もしかして甘いものは苦手かい?でも、アンタが食べなくても侍女が沢山いるだろ?彼女たちに食べさせてあげてよ。見てくれは悪いけど、味には自信あるからさ。ね――――?」



そう言って押しつけられるように持たされた。

全く接点がないのに、どうやって彼女とアランは知り合ったのだろうか。

一度、訊ねてみるか――――



・・・さま・・・お兄さま・・・ね、お兄様?・・・・



「もうっ、お兄様ったら!」

「―――っ、あぁシンディすまない。少し、考え事をしていた」


呼び声にハッとし我に帰れば、コーヒーカップを持ったまま動かないでいたことに気付いた。


テーブルの向こうを見れば、お仕事のこと?やっぱり、忙しいの?と、大きな瞳が寂しげに語りかけてくる。


遠いところを折角来てくれたというのに、放っておくなど―――


「いや、違うよ。仕事のことじゃない。あ―――何の話だったか、もう一度言ってくれるかい?」



微笑みを向ければ安心したように肩を落とし、ぱぁっと花が咲いたような笑顔をくれた。

シンディ特有の、何かいいことを思いついた時の表情だが。

一体、何だろうか。



「あのね、今度のお兄様の誕生日なんだけどね。私、いいこと思いついちゃったの――――」