救急隊員は、彼の脈を測り終わると、ため息をついた。
「お前な、俺に向かってそんな口聞いてッと、病院に連れて行かないぞ」
「生意気な。
したら俺が、お偉いさんに訴えてやる」
「お前のほうが生意気じゃないか」
救急隊員は笑うと、私に笑ってから、救急車を一回降りた。
狭い空間に、二人っきり。
何だか気まずいかも。
「救急隊員行っちゃったよ?いいの?」
「今はいろいろと大変なんだよ」
即答で答えられたんでは、話が続かない。
「婚姻届の話、どーすんだよ」
「どーするも何も、破いて捨てたし...それに、今の火事で燃えたわよ」
長い沈黙が私達を包む。
いい包むでは無いのだけれど。
「俺はずっと、お前のその傷を責任として、背負っていくんだと、あの日覚悟した。」
「......」
「でも違ったんだ」