彼は荒い呼吸のまま、ニコリと笑って見せた。
「じゃあ、今の俺は生霊かなんかか?」
「大丈夫なの?」
「腰の打撲くらいだ...痛ッ」
彼は顔を歪めながら、周りにいる仲間達と話している。
私は傍で、彼を見つめていた。
「ったく、何で婚姻届破いてんだ馬鹿ッ!」
「だって...」
「だっても、あるかよ」
「だって、
言われて...いもんッ....」
いいタイミングで、救急隊員が彼を担架に乗せて運んでいく。
彼は左手で、私に“来い”と合図をした。
お母さんの救急車はとっくに行ってしまっている。
家も黒くなっていて、私にはこの選択しか無い様だ。
「お嬢さん、どーぞ」
「えっ、あぁ、はい...」
とりあえず酸素マスクをしている彼は、救急隊員をにらむ。
「お嬢さんとか言ってんじゃねぇーよ、クソッ」