「どーせオレなんかが死んでも、誰も悲しまないし、世界も変わんないけどさ」


深江数馬は鼻で笑った。

右手に持ったタバコは、灰を落としながら段々と短くなっていく。

オレは、それを見ながらつぶやいた。


「死なないよ」


ウソかもしれない。

けど…


「お前には生きる価値があるから、死なせない」


無駄な命なんて一つもないんだ。


「センセー、やっぱ変わってんな」


16歳の少年は笑った。


「あーあ、変な医者に当たっちまった。オレ、抗がん剤でハゲんのヤダよ」

「なにぃ?眉毛剃ってるくせに、ちっせーこと言うなぁ」

「センセー…それでも医者?」


呆れた顔をしている深江数馬に、拳を突き出して言ってやった。


「共に闘う戦友ってとこだな」