「どうでもよくないだろ…」


これから感染のリスクもあるし、抗がん剤の副作用で消化管はただれ、髪は抜け落ち、ボロボロになるんだ。

もちろん、効果があるから抗がん剤を使うのだけど。

深江数馬はあまりにも楽観的すぎる。

変な違和感をおぼえながら、個室をあとにした。




「あ、道重先生!深江くん見ませんでしたか?」


血液内科2日目。

さっそくやってくれた。

深江数馬、逃走。


「朝食のときは部屋にいたのに、10時には姿がなかったの」


そう話すのは担当ナース。

あんな感じだから、きっとタバコ吹かしに、その辺にいるんじゃないか?

そう思って聞き流そうと思ったのに、


「まさか、思い詰めて…」


なんて言うから、気になるじゃないか!?


「いや…まさか、ねぇ?」

「ああ見えて、案外繊細かもしれないじゃない?」

「繊細ってガラじゃないっしょ!?」


そう言いながらも、不安が広がる。

治ることも多くなった白血病。

とはいえ、“血液のガン”とも言われる病気。