「紘斗〜!こっちこっち〜」

週末の午後10時。

繁華街のど真ん中で俺を見つけて
嬉しそうに手を振る客に
軽く手を振り返して近づくと
当たり前の様に腕をからめてくる。

純子。

俺のエースの客。

俺は10年前からホストを始めた。
その頃からの太客だ。

3年前に店を出せたのも純子が支えてくれたからかもしれない。

純子は俺の5つ上の34歳。

10年前に知り合った頃からソープ嬢をしている。

ガチガチに固めた髪に濃い化粧。

鼻を刺す様なキツイ香水。


まだ暑い夏の終わりにスーツを着ている俺は
すでに暑さでイライラしてるのに
腕に絡みつかれてイライラが倍増。

…客じゃなかったら…

なんて思いながらそのままネオン街を歩く。

純子のお気に入りのいつもの寿司屋に入る。

週末はここに寄ってから同伴するのが
いつものパターン。