名古屋に来て早くも1年が経とうとしていた。
大学で2年春学期の履修登録を終わらせ、
光子と別れ、外に出た。
千影ちゃん、
と誰かに呼ばれて振り返ると、
前に一度、友達に紹介してもらった男の子が、駆け寄ってきた。
確か、仲村、とか言ってたな。
適当に話をして、別れた。
見上げると、
真っ青なキャンパスに、所々、雑に白を滲ませたような空があった。
こっちの空は、ほとんどこんな風に晴れている。
地元とは大違い。
鞄の中の携帯が震えた。
紗英からのメールを返しながら、足早にマンションへ向かった。
すると、すれ違いざま、
懐かしいものが私を取り巻いた。
ふと、足を止めた。
その人も、
足を止めていた。
背後に感じる、気配。
期待と不安と、
懐かしさ。
一瞬で、あの幸福な気持ちが蘇った。
あの、冷たい指先も、
私だけに向けられていた優しさも、匂いも、
あの、私を取り巻く、
空気も。
期待と不安は、
確信へと、変わった。
私たちは、一緒にいなければ、意味がない。
離れてみても、
抗ってみても、
無駄だったんだ。
涙が止まらない。
一瞬でも離れた、
一時でも避けた、
私を許して。
離したのは、自分なのに。
残っていたのは、後悔ばかりだった。
苦しくて、
恋しくて、
会いたくて、
そして今、
全身で、あなたに伝えたい。
ずっと、一緒にいたい。