コツン、コン、
しばらくして、窓を何かが打った。
もう外は、うっすらと暗かった。
窓には、雪の球の痕。
開けると、庭で智人が手を振っていた。
「出て来いよ!」
そう叫ばれ、仕方なく出て行く。
厚着をして、厚いムートンブーツを履いて、庭に出ると、
「ほら」
と智人が嬉しそうに下を指差した。
小さな雪だるま。
首に掛かっている、ピンクの袋。
ほつれている、それは、
すぐに、手作りだとわかった。
「御守り」
そう言って、得意そうに笑みを浮かべる智人が、
なんだか、小さな子供みたいで、
思わず吹き出した。
「こんな早い時期から、合格祈願の御守りもらうなんて思わなかったよ」
笑いながら、
かがんで、御守りを見ると、
「カ内円マン」
黄色い糸で、ガタガタに縫ってある字を、
目を細めて、声に出して、確かめるように読んだ。
「なに、これ」
「なにって、御守り」
「間違ってると、思うんだけど」
「え?なにが」
「合格祈願、じゃ、ないの?」
彼が、
目を見開いて、
ぽん、と手を叩いた。
これ、ほんとに、
マジボケ?
可笑しくなったけれど、
彼の左手についている、
ばんそうこうが見えた。
いち、に、さん、し、ご。
雪が、ふらふら、気ままに、舞う。
少しくすぐったくて、
でも、うれしくて。