「何、してるの?」

彼女はゆっくりと振り向いた。

「飛ぼうとしてるの」

凛と響く声。これが、彼女と僕の初めての会話だった。


「飛ぶの?」


僕の問いかけに、彼女は無邪気に微笑んだ。

「飛ぶよ」


きっぱりと言い切られ、僕は何と言って良いものか迷った。それから口をついたのは、ありきたりな疑問文でしかなかった。

「本当に飛ぶの?」

彼女はこくんと頷く。

「うん」

そしてまた、僕は問う。

「飛べるの?」

「飛べるよ」

この堂々巡りな会話に終止符を打つべく、僕は拳を握った。


「どうしてそう思うの?」