「利一さん。」
泉の父は店にいる利一に声をかけた。
「明日、泉をここから連れて出ます。お世話になりました。」
「え、ちょっと待って、えらい急な話やけど、」
利一は戸惑っている。
「吉村さんは泉を受け入れてやったん?家に連れて戻るん?」
「いえ、泉には一人暮らしをさせて自立させます。いつまでもあなたに甘えさせるわけにはいかない。」
「別に甘えさせてなんかない。泉は店の手伝いもしてくれるし、家事だってほとんど任せとる。」
「甘やかし以外の何物でもないじゃないですか。あなたは一体、泉に何をしてきたって言うんです?」