「ありがとうございましたー」
時刻は二十二時。
定時まで残り一時間あるが今日は雨が酷いせいか客の入足が悪く、店内には遼と陽平とパートの佐々木さんしかいない。
早めにトイレ清掃を終わらせて、ペットボトル飲料の補充も終わっている。あとやることといったらレジ金の確認と商品の陳列くらいだろうか。
業務日誌に目を通していると、拭き掃除をしていた陽平が外を見ながら話し掛けてきた。
「この雨、来週も降り続くらしいぜ。お天気お姉さんが言ってたんだ。顔も声も可愛くて脚もすらっとしててさ、ついテレビに向かって挨拶しちゃうくらいなんだけど名前チェックするのいつも忘れちゃうんだよなあ!」
心底悔しそうにする陽平の肩を「はいはい」と返事する代わりに二回叩き、業務日誌を棚に戻す。
「まあ名前は明日チェックするとして、七日までこんな天気だったら可哀想じゃね?」
「七日に何かあるのか?」
首を傾げて聞き返す遼に、陽平はこれまでかというほどに目を広げながら、鼻がくっつきそうな距離でわざとらしく溜息を吐いてきた。なんて失礼な奴なのだろう。
「おまえさぁ、何年生きてんの? 人生何年目の男の子よ? 七月七日なんて普通に考えて七夕しかないでしょ。桃組の時にカンナ先生と一緒に短冊書いたでしょ。一年に一度だけ、彦星と乙姫様が天の川渡って、やっと会えたねって抱き合う日だよ。まあ、その後は男女のことだからナニをするかはご想像にお任せするけど、安い恋愛映画より感動的じゃん!」
「乙姫様はじいさんになる玉手箱を寄こす性悪お姫様の方。七夕なら織姫様な」
一応間違いには突っ込んでおいたが、陽平は何を想像しているのか両手をわきわきさせながらにやにやと笑っている。
今の何ともだらしない表情はさておき。陽平の頭では昨日の夕飯さえ覚えていないと思っていたのに、幼稚園の時のカンナ先生の話を出すなんて。変なところで記憶力がいいんだなと妙に感心してしまった。
時刻は二十二時。
定時まで残り一時間あるが今日は雨が酷いせいか客の入足が悪く、店内には遼と陽平とパートの佐々木さんしかいない。
早めにトイレ清掃を終わらせて、ペットボトル飲料の補充も終わっている。あとやることといったらレジ金の確認と商品の陳列くらいだろうか。
業務日誌に目を通していると、拭き掃除をしていた陽平が外を見ながら話し掛けてきた。
「この雨、来週も降り続くらしいぜ。お天気お姉さんが言ってたんだ。顔も声も可愛くて脚もすらっとしててさ、ついテレビに向かって挨拶しちゃうくらいなんだけど名前チェックするのいつも忘れちゃうんだよなあ!」
心底悔しそうにする陽平の肩を「はいはい」と返事する代わりに二回叩き、業務日誌を棚に戻す。
「まあ名前は明日チェックするとして、七日までこんな天気だったら可哀想じゃね?」
「七日に何かあるのか?」
首を傾げて聞き返す遼に、陽平はこれまでかというほどに目を広げながら、鼻がくっつきそうな距離でわざとらしく溜息を吐いてきた。なんて失礼な奴なのだろう。
「おまえさぁ、何年生きてんの? 人生何年目の男の子よ? 七月七日なんて普通に考えて七夕しかないでしょ。桃組の時にカンナ先生と一緒に短冊書いたでしょ。一年に一度だけ、彦星と乙姫様が天の川渡って、やっと会えたねって抱き合う日だよ。まあ、その後は男女のことだからナニをするかはご想像にお任せするけど、安い恋愛映画より感動的じゃん!」
「乙姫様はじいさんになる玉手箱を寄こす性悪お姫様の方。七夕なら織姫様な」
一応間違いには突っ込んでおいたが、陽平は何を想像しているのか両手をわきわきさせながらにやにやと笑っている。
今の何ともだらしない表情はさておき。陽平の頭では昨日の夕飯さえ覚えていないと思っていたのに、幼稚園の時のカンナ先生の話を出すなんて。変なところで記憶力がいいんだなと妙に感心してしまった。