「お、暴力お姫さん。やっとご到着かよ」

ニカッと音が出そうなほど明るく笑いかけてきた陽平の腹部を、挨拶代わりに一発殴る。陽平は「ぐふっ」と声を出しワケがわからないという顔を向けるが、真白はざまあみろと鼻を鳴らした。

すると視界に影が差し、目線を上げれば真白を見下ろすように立つ遼が。

「道、迷ってたのか?」

「は?」

「来るの遅かったから」

「別に…。行きたくないなって思ったら足が前に進まなかっただけ」

真白はそう言った後で後悔した。子供っぽい理由を言ってしまった気がする。それに、場の雰囲気をぶち壊してしまったのか、静まり返る三人に居た堪れなくなってきた。

帰りたい…。

そう思った瞬間、真白の頭に温かい手の平が置かれた。

「普通、そんなこと言ったら相手怒るぞ。ごめんなさいは?」

そう言いながら遼は真白の頭を軽くポンポンと叩く。

これは彼の癖なのだろうか。そう思ったが、子供扱いをされたことが癪に障った。

「…うるさいわね。子供扱いしないで!!」

遼の手を振り払いながら強気に言うと、遼は少し呆れているようで。ピリピリムードになってきた二人に、陽平と結衣は不安になってくる。

「と、とりあえず行こうぜ!! 俺もう腹減っちゃって…なぁ?」

「う、うん! そ…それがいいよ!! 私もお腹ぺっこぺこ!!」

「先に行ってていいよ。こういうところはちゃんとさせておかないと…」

「いいから!! ほら、楽しもうぜ!!!」

流れを変えようとした陽平に結衣も続いた。二人はどんどん祭りへと足を進めて行く。

遼は納得がいかず、もう一度真白に謝るよう諭そうと思ったが、見るからにシュンとして指をもじもじとさせている姿に今回は折れることにした。