「あ、真白―っ!! こっちこっち!!」

来た道を少し迂回して戻り、今来ましたという風を装って真白は三人の元へと歩を進めた。俯いている為、まだ表情は窺えない。

「浴衣着て来たんだね!! て…う、わっ!!!」

笑顔で駆け寄ってきた結衣のトップスの裾を真白は強く引っ張る。結衣は小さな悲鳴とともにバランスを崩したが、なんとか堪えることが出来た。

「もう…、危ないでしょー!」

「なんで浴衣じゃないのよ!?」

「へ?」

「『へ?』じゃない!! 浴衣、着るんじゃなかったの!!?」

「だって真白が嫌だって言ったんじゃない」

早口で捲くし立てる真白に対し、いたって冷静に言葉を紡ぐ結衣。真白は確かに言ったと思うと、ぐっと口を噤むしか出来ない。そんな真白の様子を見て、結衣はふわりと笑った。

「可愛いね。真白は肌白いから凄く似合う!」

「…どうも」

可愛さの欠片もない返事をした真白は、「陽平君達にも早く見せてあげよう!」と言う結衣に腕を引かれ渋々歩き出した。