「終わったよ」

暫くして遼がそう伝えると、今まで黙っていた真白が口を開けた。

「綺麗な足なのにって、人形みたいってこと?」

「え…、」

「私は綺麗で可愛くて人形みたいって、そう言いたいの?」

「……それは笑っていいところ?」

「……」

「あ、いや…、ごめん」

突然の問いに正直戸惑ったが、しゃがんだ姿勢のまま真白の目を見つめて思った言葉を口にした。

「君は確かに、凄く綺麗な容姿をしていると思うよ。最初コンビニに来た時も、童話のお姫様が飛び出してきたのかと思った。白雪姫とか、そんな感じの。今も目の前にいて綺麗な子だなぁと思う。でも、君みたいに感情を剥き出しにする子が人形みたいとは思えないかな」

すると真白は何かに弾かれたかのように固まっていた。

……僕は何か変なことを言ってしまったのだろうか。

そう不安になった時、真白がすっと遼に向かって両手を伸ばしてきた。何かを求められているようだが、何を求められているのかがわからない。

「…何をぼうっとしてるのよ」

「いや、コレ何かなって」

「…バス停まで」

「バス停?」

「足……、痛いから連れて行きなさいよ」

ぶっきらぼうに言う真白に今度は遼が止まってしまったが、理解した途端に温かい笑いが込み上げてきた。





そして背中を差し出し、彼女の腕が首にまわされたのと同時に、耳元で囁かれた言葉は僕の名前を問うもので。

『篠田遼』と応えた後に返ってきた君の声は、今でも僕の鼓膜を揺さぶってやまない。



―――「あなたの名前覚えてあげるから、私の名前も覚えておいて。……遼」