「お上がりー」

部屋に戻ると、ベッドに腰掛けながらミネラルウォーターのペットボトルに口を付ける結衣がいた。

結衣が用意した新しい眼帯と寝間着を身に付けた真白は、頭に被っていたタオルを徐に結衣の顔目掛けて投げつける。

「ちょっ、何すんのよ! 零しちゃったじゃん!」

言いながら投げつけられたタオルで零したところを拭き取り、素早く畳んで返してくる結衣に苛々する。

「うるさいっ! パジャマはともかく、なんで替えの下着まで用意してくれてんのよ! プライバシーってもんがあるでしょ!!」

「だって濡れてるの穿きたくないでしょ? それに真白の私物ならどこに何があるのかわかりきってるもん。あ、髪乾かしてあげるから座って?」

にこりと笑ってドライヤーとブラシを用意する結衣にもっと言い返してやりたかったが、真白は大人しく背を向けて無言で座った。

まだまだ言い足りない部分はあったが、この笑顔にはどうせ勝てないのだ。

長引かせるほど疲れが溜まることもちゃんとわかっている分、真白にも冷静さはあるのかもしれない。

悶々としている真白を余所に、艶々としてハリのある日本人形のような黒髪に、結衣は根元からドライヤーをあてていく。

「ねえ、ところでコンソメパンチは?」

「……」

結衣が思い出したように尋ねると真白はわざとらしく顔を背けた。