次の日の朝、私はこれでもかっていうくらい元気に学校へ向かった。

「いってきまぁす!」

「いってらっしゃい、真里亜」


お母さんと笑いあって会話ができたことがすごく嬉しかった。


学校へ着くと、グラウンドには野球部の姿があった。

今まで気にしてみることはなかったけど、仁の話を聞いたせいで少し気になる。


部員たちはただ今グラウンドをランニング中。

皆で声を出し合いながら一定のテンポで走っていた。


「すごいな~。朝からよく走れるね。」


と、感心しながら仁の姿を探す。

でも、そういえば、仁は朝は出てこないって言ってたっけ。


捜した意味もなく、仁の姿は見当たらない。



少し残念な気持ちになりながら教室へ向かった。

本当は行きたくない学校。


なのに、どうしてだろう。

今日は、行きたいって思ったの。


多分、私、仁にお礼が言いたかったんだと思う。


仁に、勇気をもらえたような気がしたから。

あくまで、気がしただけだけど。


お昼休みになって、少しだけ頑張って3年生の教室の近くまで行ってみた。

「うわ~。3年生ばっかり?」

「あれ、真里亜?」


その時、急に話しかけられた声は振り返らなくてもわかるあなたの声。

「あ、仁!」


「お、おう。なんでここに?なんかあったのか?」

「え、いや、今日はそんなことじゃなくて。」


「ん?」


仁はここに私が来た意味を、また一斗たちのことで怖くなって来たんじゃないかって思ってくれたみたい。

こんな先輩の友達?になれて、嬉しいと思う。


「あの、話があって」
「ちょっと、ここでは無理だな。」

「はい?」


そう言って、私に背を向けて歩き出す仁。

「来いよ。」