あのケーキはごめんなさいって思いながら、捨てちゃった。


その日から、真里亜が少しずつ壊れて行った。

私のせいかもしれないって何度も思ったけど、パパは違うって言ってくれた。


真里亜が壊れてしまいそうなときに、私まで壊れてはだめだと思ったのよ。


真里亜が入院してからも、帰って来てからも、私はできることをしたわ。


昨日真里亜が帰ってこなかったときは、本当に寂しかった。

家族が一人いないのって、すごく寂しいんだって、改めて分かったの。


何度か思ったことがあった。

この家を出て行こう、ってね。


でも、出て行かなくてよかった。



今日、真里亜が帰って来てくれた。

何て言ったらいいのか、悩んだ。

『ただいま』って真里亜が言った。


パパも、真咲も。

私は、言うべきなの?って考えた。


真里亜は、言ってほしくないかもしれないって思う自分と、言いたいって思う自分がいたの。


それで、私は真里亜にちゃんと伝えようって思ったの。

今までのいろいろな気持ちを込めて。


「おかえり」って。

真里亜が、私に「ただいま」って言ってくれた時は、本当に、ほんっとうに嬉しくて。

涙が出た。


一緒にご飯を食べるときも、今日は違った。

家族っていいなって本当に心から思えたの。


本当に、嬉しかった―――





お母さんが全てを話してくれた。
私の目には涙が溜まっていた。


「真里亜、今までごめんなさいね。」

少しだけ、頭を下げながら言うお母さん。

なぜ、謝るの?