「ただいま。」
そっと呟いた私の声は、リビングのテレビの音に消された。
皆、いるのかな。
リビングに向かうと、そこにはパパと真咲、そして夕ご飯の用意をするお母さんの姿があった。
ガチャッ―――
3人が私の方を向く。
「ただいま。」
さっき呟いた言葉をまた言ってみる。
「おかえり、真里亜」
パパ。
「おかえり、お姉ちゃん」
真咲。
そして―――
「・・・・・・」
お母さん。
やっぱり、お母さんは言ってくれない。
少し悲しいな。
またリビングの扉を開けて、リビングから出ようと思った。
でも、私の背後から一言の言葉が聞こえてきた。
だから、私はリビングから出ていくことができなかった。
「真里亜、お帰りなさい。」
遅いよ・・・。
お母さん。
私、嫌いなの。
お母さんのこと、嫌いなんだよ?
でも、その言葉を聞いたらね、言いたくなったの。
ねぇ、お母さん―――
「ただいまっ」