そして、私は気が付いた。
自分がベッドに寝かされていることに。
すぐに起き上がろうとしたけど、体がうまく動かなかった。
「あぁ、まだ寝てな?」
「で、でも」
「疲れてんだろ?横になってろよ。」
「・・・・・・」
その男の人は、優しく私の頭を撫でてくれた。
大人にしては、少し若いような気がする。
大学生か、もっと言えば高校生かもしれない。
身長も高く、わりと細身な人。
でも、袖から覗く腕は筋肉が付いていてどうやら体育会系らしい。
「腹減ってる?」
「え、いや。あまり。」
「そっか。おかゆでも作ろうか?」
「いえ、大丈夫です。帰ります・・・」
「あ、じゃぁ家まで送るよ。」
「大丈夫でっ」
「っと。」
ベッドから降りて歩こうとしたとき足元がふらついた。
倒れ掛かる私を、タイミングよく男の人が支えてくれた。
「これだから、心配だし。な、おく」
「嫌です!」
自分でも驚くくらい大きな声で叫んだ。
男の人もかなり驚いたらしく「と、とにかく座ろっか」と言って私をまたベッドに座らせる。
「で、なんで嫌なわけ?」
「・・・・・・」
「なに?」
「嫌なものは、嫌だからです。」
「でも、さっき帰るって言ったよな。」
「・・・・・・」
とにかく、この家にずっとお世話になるわけにもいかない、そう思った私はとっさに帰ると言ってしまった。
でも実際は帰りたくなかった。
さっき、すべて心の中で決めたことがある。