電話を切って、仁の家へ向かう。


仁は今もあのアパートに住んでる。

引っ越すのがめんどくさいんだって。

「お、いらっしゃい。」


「はい、いらっしゃいました。」


仁の部屋も、何も変わってない。

しいて言うなら、ちょっとだけ模様替えをした程度。


本棚が増えたってだけだけど。


教材的なものがたくさんある。

懐かしい教科書もあって、少し楽しい。


「で、話聞きたいんですけど?」

「あ、そうだね。」


「就活やめたのか?」


「うん。今日やめてきた。」

「これまた急だな。」


「だってね、昨日本当にわかったんだもん。」


「なにが?」


お茶を飲みながら話を聞いている仁。

これは、吹くよね。



「ん~?今、4か月なんだって~。」


「ん?なにが4か月?」

「赤ちゃん。」


プハーッ―――


「汚いよ、仁。」

「いま、なんて言われました!?」


「もう言わない。」


意地悪をして、2回目を言わない私に「まじ!?ほんとに!?」ってずっと聞いてくる仁。


話、ちゃんと聞いてるんじゃん。


「だから、就職はやめたの。」

「わぁ。まじか。やべぇ・・・すげー嬉しい・・・。」