再び私の目に涙が浮かび始める。


「ぷはっ、何泣いてんの。泣くなって。」

ポンポンッと私の頭を叩く仁。


仁を見ると、優しく微笑んでくれていた。


「いじわるぅっ」

「はいはい。俺は真里亜に大っ嫌いだって言われても、好きって言い続けてやんよ。」


「それ、かなりしつこいよ。」

「それでも、真里亜はずーっと俺のだから。」


私を仁の虜にさせるような言葉をさらっと言っちゃう仁。


きっと本人はそんなことには気付いてないと思うけど。

「さて、真里亜さん。帰りますか。」


「あ、ですね。」


今日はみんな疲れてるから、帰ってゆっくりしないとね。

私も応援で疲れちゃったし、仁も相当疲れてるんだろうな。



荷物を持って、ベンチから立ち上がる。


グーッと背伸びをして「帰ろっ」と仁を見る。


でも、仁はベンチに座ったまま立とうとしない。

「仁?どしたの?」


私を見つめたまま動こうとしない仁。

私の服に何かついてる?


でも、制服を見てもゴミが付いてるようでも虫がついてるようでもない。

また仁を見ると、笑いをこらえていた。


「ちょっと、なんで笑ってるの?」

「いや。可愛いなぁって。」


「そ、そんなこといいからっ。なんで立たないのよ!」

「帰したくねぇなって。」


ほら、またこうやって仁のことを好きにさせる。

そんなこと言われたら、私だって帰りたくなくなる。

でも、疲れてるだろうから早く帰ってゆっくりしてほしいと思ってるのも本心。


「真里亜。」

「ん?」


「もぉ少し一緒にいてぇな。」