「・・・あ、えっ」

「尾崎せんぱーい!」


私は尾崎先輩の名前を叫んだ。

岡本先輩は目を見開いて立っていた。


「仁!ホーム!」


仁がホームへ向かって走る。

尾崎先輩は1塁へ必死で走っていた。


ボールは、レフトへ飛びレフトからセカンドへ投げられた。

お願い、仁!


仁が、今・・・ホームを踏んだ。


「やったぁー!一点入ったぁ!」

「真里亜ちゃーんっ」

「うわぁっ」


岡本先輩が私に抱きついてきた。

先輩の肩が震えているのがわかった。


「まだ、勝ったわけじゃないですよ。まだ後一点必要なんですからっ。」

「うんっ、うんっ・・・」


わかっていても涙は出るもの。


それは私もわかってますよ。


尾崎先輩は1塁からこちらを見ていた。

でもあいにくその時は岡本先輩は私に抱きついて尾崎先輩の方を向いていない。

ちょっともったいないですね。


教えてあげたいんですけど、放せそうにない岡本先輩。

そうしている間に、高橋先輩が出てきた。


この波に乗って、打ってほしい。


この試合に、勝ってほしい―――。






そしてそれは、ちょうど太陽が顔を出した時だった―――。


『ゲームセット!』