「隆也ー!打ちなさいよー!」
もう命令形になってます。
それくらい必死なんです。
岡本先輩の声が聞こえたのか、尾崎先輩がこっちを向く。
一瞬だけ立ち止まって、またすぐに歩き出す。
仁と尾崎先輩はすごく似てると思う。
バットを構えた尾崎先輩を見守る岡本先輩はさっきまでの私みたいだった。
きっと、岡本先輩の気持ちも尾崎先輩に届いたはず。
3塁に藤井君。
2塁には仁が待っている。
尾崎先輩が、バットを振る―――
パンッ―――
ストライク。
2投目。
パンッ―――
ボール。
3投目。
カンッ―――
打ちあがったボールは、ファールボールとなった。
一球一球が緊張に包まれながら打たれたりミットに収まったり。
打たれたボールはなぜかファール。
「隆也、力みすぎだわ・・・。」
岡本先輩も不安でいっぱいらしい。
私だって、それはもう緊張してますよ。
カンッ―――
そのボールもファール。
今ので確か7球目。
「お願い、隆也・・・っ」
岡本先輩がつぶやいた、その時・・・―――
カーンッ―――