「「おぉ!」」
仁が振ったバットには見事にボールがヒットした。
ボールの飛距離は、充分。
田中先輩がベースを蹴って余裕でホームへ向かう。
藤井君が3塁へ進み、仁が2塁へ走る。
「走れー!」
藤井君はベースを蹴ったけど、仁はもう少しで2塁というところでボールが追いつく。
ヘッドスライディングで飛び込んだ仁。
結果は・・・―――
「っセーフ、セーフ!!」
「「キャァー!」」
大きな歓声が沸く。
私も、大声で岡本先輩と一緒に叫ぶ。
2塁では仁がユニホームの土を払っていた。
それでも落ちない土の後は彼をさらに輝かせて見せた。
汚れてなんかないんだから。
頑張ってる証だってことだから!
そして、次のバッターは尾崎先輩。
隣ではすでにそわそわしている岡本先輩。
そして、私はまた岡本先輩の手に目が留まる。
聞いちゃだめかもしれないけど、でも気になる。
「先輩。その手に持ってるのは・・・なんですか?」
「あ、これ?これは、お守り。」
「お守りですか?」
「そう。みんなが今日の試合に勝てるようにと思って。」
岡本先輩の手にあった小さな紙には「優勝」という文字が書かれていた。
「本当は縫って、ちゃんとお守りみたいにしようって思ったんだけど間に合わなくて。だから試合が終わるまで、手に持っておこうかなぁって。」
「さすがですね。みんな、きっと勝てますね。」
「勝ってほしい。ううん、勝つわよね。」
太陽が少しずつ雲から顔を覗かせはじめていた。