「次って、4番じゃいなか。」
「え、神野くんピンチじゃない。」
この状況で4番は確かにきついと思う。
この相手チームの4番の人って、今日はまだアウトを出していない。
「神野くん、肩に力入ってるわね。」
確かにここから見てもわかるくらいに仁は力んでる。
これじゃますますヤバいよ。
そんな仁が一球目を投げる。
カーンッ―――
その球は軽々と打たれてしまった。
ボールが飛距離をどんどん伸ばす。
その間に、3塁にいたバッターがホームへ帰る。
2塁のバッターもベースを蹴ってホームへ向かう。
ホームランにはならなかったボールがホームへ向かう。
でも、間に合わず結局2点が相手チームに入ってしまった。
「逆転・・・」
6回の裏で逆転を許してしまった。
マウンドを見ると、仁は立ったまま動かなかった。
仁が見ているのは、私たちがいる方。
いや、自信過剰かもしれないけど私を見てるような気がした。
「おやおや?愛しの仁くんが」
「先輩!」
それには岡本先輩も気づいたようで、早速茶化してくる。
今、仁はどんな思いでこっちを見てるのかな・・・。
その後、仁は3アウトを取り7回の表でうちの攻撃が始まった。
ベンチに入った仁は下を向いたままだった。
大木先輩がバッターボックスへ入る。
でも、あっさりと三振を取られた。
続く山口先輩も同じく三振。
みんなの調子が崩れ始めた。
「エースが崩れると周りも崩れる。それがどうやら始まったみたいね。」
岡本先輩の顔も不安の色を見せ始めた。