バッターの人がベンチへ戻っていく。

ネクストサークルにいた人がバッターボックスへ入る。


今のところ連続三振って、かなりすごいことだよね。

「今日の神野くん、気合入ってるね。」

「そう、ですね。」


だ、だめだ。


仁をまともに見れない。

どうして・・・。


私が仁に対する気持ちを自覚したから?

でも、ほんとに、私・・・好きなの?

だって、あんなにも一斗のことが好きだったのに・・・。


今だって、完全に忘れたわけじゃない。

結局バイバイも言わずに一斗とカナはいつの間にか学校からいなくなってた。

本当はカナのお腹には子供はいないってことを、一斗は知ったのかな。


もし、それでまた学校に戻ってくることってないのかな。


だとしたら、私まだ待とうって思える。



でも、そんな可能性ってゼロに等しい。

待ってるだけ、無駄なのかな。


「今一番好きな人を見た方がいい。私は尾崎を見てるよ。」


「え・・・」

岡本先輩の言葉はまるで私の心を見透かしたような言い方だった。


一番好きな人を、見る。




その時、一番最初に頭に浮かんだのは、あなたでした―――

「好きって、わかった?」


「・・・多分ですけど。」

「ふふっ、私と同じ片思いかしら。」


私と岡本先輩が見ている人は違う。

でも、その人たちは私たちにとって愛おしくてたまらない存在という点では変わらない。


私、好きだったんだ。

きっと、ずっと前から。