もしかして、裕樹は私のこの変な気持ちに気がついてた?


でも、私自身そんな自覚ないんだもん。

鈍感かどうかさえ分からにような私に、よく言い続けたよね。


「神野くんのことどう思ってる?」

「・・・今はわからなくなりました。さっきは友達って言ったのに、今はそう言うとなんだか寂しいような気がして。」


「自覚、したんじゃない?好きだと思って神野くんを見てると、もっと好きになるんじゃない?あのマウンドにいる神野くんとかね。」


そっとマウンドに目を向けると、さっきと変わらないはずの仁がすごく・・・愛おしく思えた。


だって・・・―――


「かっこよくて、好き・・・」


「あらっ。やっと言っちゃった?」

「え!?あ、わ、私、今なにか!?」


「真里亜ちゃん、可愛い。ほら、神野くん見てないとっ。」


勝手に口から出てしまったその言葉は、私の心にあった言葉。

そう、なの?


私、仁のこと好きなの?


だって、今までそんなこと考えもしなかった、でしょ?

かっこいいからって、惑わされてるんだって!


でも、鞄に付いているリングを見るとなぜか胸がドキドキした。


だから、これは仁にあげたリングの余りなわけで、私がほしくて買ったわけじゃないの。

仁とペアっていうだけで・・・すごく嬉しいのはなんでよ・・・。


だ、だからそれはただ単に!

「三振多いね、神野くん。」

「はい!?」


「神野くんのこと考えて顔を赤くするのもいいけど、今この瞬間を見てないと後悔するよ?」


顔が赤いって、私のことですか?

そんな自覚は全然なかったけど、言われてみると確かに少し顔が熱いような気がした。


マウンドでは、仁が次の球のサインを見ているようだった。

そして、その球を投げる。


「今、バッターって何人目ですか?」


「この回はこの人で2人目。今のところ連続三振。」