「神野くん投げ終わったね。」
岡本先輩のその言葉で再びグラウンドに目をやると、仁がマウンドからベンチに戻っているところだった。
相手の得点はなく、1回は両チーム得点は入らなかった。
「真里亜ちゃんは神野くんのこと好きじゃないの?」
「それは、わかりません。ただの友達として好きっていう感じというか。」
「じゃぁどうしていつも神野くんばかり見てるの?それも友達として気になるから?」
そんなことを言われても、私本当に仁のことは友達として見てる、はずだから。
「もういいじゃないですか。応援しましょうよ。」
「神野くんを?」
「みんなを、です。」
話をそらそうとしたのに、それでも尚、仁を絡めてくる岡本先輩。
4番の田中先輩が出てきた。
今日もいいバッティングを期待して、みんなで応援をする。
でも、私はベンチにいる仁のことを見ていた。
無意識に。
声では、口では、田中先輩を応援してるのに、頭の中では仁のことを考えていた。
ベンチにいる仁は笑ってた。
きっと、楽しくて仕方ないんだ。
隣には尾崎先輩がいて、時々話しかけているのが見えた。
二人で笑いあっているときもあって、何がおもしろいのか楽しいのか気になる。
きっと、私があの場所にいたらすぐに聞きに行くと思う。
でも今は、そんなことできない。
―――寂しいな。
「まーりーあちゃーん。」
「岡本先輩、その呼び方なんですか。」
「愛しの仁くんが気になるんでしょ。」
「ち、違いますって!」
愛しのって、私がいつそんなことを言ったんですか。