打順は前回と変わってない。


1番の和泉先輩が打席に立つ。

スタンドからは「和泉!」の声が湧き上がる。


初球は見送って相手の投手の調子を確認したみたい。

きっとみんな緊張してる。

でも、和泉先輩がこれからのみんなの流れを作ってくれるはず。


カーンッ―――

和泉先輩が打ち上げたその球は、見事にライトでキャッチされた。

これでワンアウト。


出だしは、微妙な感じで始まってしまった。


その後の2番、3番の大木先輩と山口先輩も打ち上げたり三振だったり。

甲子園って、なんだかすごい。


周りを見渡してみると、その場の空気に圧倒される。


球場なんてどこでも同じだと思ってたけど、ぜんっぜん違う。

きっとあそこにいるみんなも、何かを感じているんだろうな。

緊張も私たち以上にしてるよね。

「真里亜ちゃん、神野くん投げるよ。」

「あ、そうですね。」


マウンドに立つ仁は今までとは違う雰囲気で更にかっこよく見えた。

仁はいつでもかっこいい。


出逢ったときにも思ったけど、今はそれ以上にかっこいいと思える。


どうしてだろう。

マウンドにいる仁が、私にとって特別な存在のように思えた。


「マウンドに立つ人ってかっこよく見えるわよね。」


「ですね。尾崎先輩に負けてませんよ?」

「あら、その言い方意味深ね。」

私の目を見て話す岡本先輩からすぐに目をそらした。


何でそうしたのかわからないけど。


「意味深って、別に何もないですよ。私個人の感想です。仁だってかっこいいって思ってあげないとかわいそうじゃないですか。」

「ふ〜ん。あ、投げるわよ。」


仁が投げた球がキャッチャーのミットに吸い込まれていく。



手元に相手の情報がないから全然わからないけど、バッターの人強そう。