「仁。どうかした?」


「早く教室行かないと遅刻だぜ?」

「わかってるよ。仁こそ早くいきなよ。」


「ってか、真里亜さっきから何か探してんじゃねぇの?」


この人ってカン良かったっけ。

仁が言ったことが図星の私は何とも言えなかった。


「おい。何かねぇとか?」


「まぁ、いいよ。行こ行こ。」


荷物を持って立ち上がる私を不思議そうに見る仁。

でも、私が部室から出ると仁も部室から出てきた。

一緒に下駄箱まで向かう。


「なぁ、真里亜。」


「はい?」


「お前、絶対なんか忘れたろ。」


だから、そんなことズバズバ言わないでよね。

返事に困る私。


「気にしないで。特にたいしたものじゃないから。」

「やっぱ忘れもんか。いいのか?俺が貸せるもんなら貸すけど。」


「いいよ。大丈夫。」


大丈夫じゃないけど、大丈夫と言ってしまった。

正直に言えばよかったと、仁と別れてから後悔した。


どうしよう、このままだと先生に確実に起こられる。


『学校に何しに来てる?』って聞かれますか!?

『そんなに勉強したくない?』って言われちゃう!?


私の中で先生の恐ろしい姿しか浮かばない。


教室に入ると、クラスはほとんど埋まっていた。

誰かにシャーペンだけでも借りないとヤバいですよね。


隣の席の子に貸してもらえるかな。


自分の席に荷物を置いて隣を向くとそこにはまだ誰もいなかった。

ついてない・・・。


残り5分くらいで先生が来る時間。

ショートホームルームが終わったら借りよう。